トーンアーム改造

2004/07

GT-2000L純正アームYA−39を強化する

GT-2000Lシリーズには2種類の純正オプションアームがありました。
YSA-1とYSA-2です。
興味はあったのですが、GT-2000Lを購入した当時は資金不足でしたし、それほど必要性も感じていませんでした。
その後、欲しくなった時には既に生産を終了していました。
時、既に遅し。

実は以前、ストレートアームを手に入れた事が一度だけありました。
1995年の春ごろ、地元の某無店舗中古ショップからYSA-2の中古を購入しました。
「極上品なのですぐ買手が付きます。すぐに送金してくれるなら取っておきますよ。」
「いくらですか?」
「・・・50000円でどうです?」
定価60000円なので極上品で50000円なら高くないと思いました。
「分りました、すぐに送金するので確保しておいて下さい。」と現物も見ずに50000円を送金しました。
果たして送って来たものはと言えば・・・。
まずメインウエイトが無い。ベースが何かに押し潰されたように変形して割れている。アームを動かすとゴロゴロとした感触がある。
そして何より気になったのが隅々に泥がこびり付いていたのです。
水没品か瓦礫からの掘り出し品か。
つまりは不良品を掴まされたのでした。
さっそく電話で「これ不良品ですよ。返品します。」と言うと
「中古品ですから返品不可です。」とあっさり断られてしまいました。
「じゃあメインウエイトはどうなるんですか?最初から付いていませんよ。」
「それはこちらで探して送ります。」
と言う返事でした。
送られて来たウエイトは全くの別物で使い物になりませんでした。
その旨電話すると「探して送ります。」と言ったきり何も送って来ませんでした。
MJ誌にも掲載しているショップで、以前GT-2000用の外部電源を買った事もあったので信用していたのですが、まさかまったくの不良品を掴まされるとは思いませんでした。
強引に返品要求しようとも考えましたが、メインウエイトさえあれば保守パーツで何とか再生できるのではないかと修理する事にしました。
しかし、状況は甘くありませんでした。
ヤマハに問い合せたらウエイトもベースも欠品で、あるのは一部のネジだけでした。
現在ならインターネット等の情報も豊富なので何とかなったのかも知れませんが当時はどうすることも出来ずに結局捨ててしまいました。
今となっては苦い思い出になっています。

さて、気を取り直して。
GT-2000シリーズは純正トーンアームが弱点だ、とあちこちで耳にします。
さりとて、オプションのストレートアームは入手困難です。
ならば予備の純正アームを改造してみようと思い立ちました。
しかし、アームの様にデリケートな物を改造して良くなるのだろうか、悪くなったら貴重なアームが無駄になる。
でも、アームによる音の変化も聴いてみたい。
考えた末、実行する事にしました。
あまり無茶な事はせず、リード線の交換と剛性アップくらいで止める事にしました。

予備として購入していた純正アーム。
今回の改造では、このアームを使用します。
ここでの各パーツの名称は正式名称ではありません。
私はパーツリストを見た事が無いので、もし違ったらご容赦下さい。
中古でしたが未使用品と言う事でした。
ほぼ新品に近い状態です。
純正アームの信号線は直接ハンダ付けしてあります。
ケーブルのハンダを外して、そのベースの金物も外します。
ベースのポール(アームを固定する丸棒)を取り外します。
ネジ2本で取り付けてあります。
ポールの穴にエポキシ接着剤を流し込みます。
長時間硬化型を使うとジワーッと奥まで流れ込むので隙間が出来ず最適です。
2液を混ぜた時に混入した空気が浮き上がって来ています。
ベースの裏側。
これは叩けばキンキン鳴きます。
キンキン鳴くのが一概に悪いと言うわけではありませんが特定の周波数で共振する可能性があります。
強度不足なのか、ヒビが入ったり割れたりする事があると聞きます。
意味不明の基盤はあらかじめ取り外しました。
ここにはエポキシパテ(金属用)を隅々までグイグイと押し込んでガッチリと固めます。
プラスチックのベースを取り外します。
内蔵されているスプリングは、アームの高さを調整する際にストンと落下するのを防ぐための物です。
プラスチックベースにしてもスプリングにしても音質的には良いとは言えませんね。
余計なものを取り外したアームベースの裏側。
構造が複雑で肉厚も薄く、軟弱な印象ですね。
アーム本体を取り外します。
ポールの入る穴とアームの取り付け部分の繋がりが少ないのが分かります。
剛性もあまり強くないようですね。
オートアームリフターの機構を取り付ける関係上こうなったのでしょうか。
ここは強度を持たせたいところですから、エポキシパテを隅々まで押し込んでいきます。
ただし、色々なパーツとの取り合いがありますから邪魔にならないギリギリまで押し込んでパーツが当たったり磨れたりするところは削り取ります。
パテの色が違うのは単にメーカーが違うだけで同じパテです。
生乾きの状態ならカッターでさくさく切れるので、柔らかいうちに成型します。
完全に硬化したらヤスリでないと削れません。
上から見たところ。
アームが取り付け可能なギリギリのところまでエポキシパテを押し込みます。
これで、かなり剛性アップになったかな?
次はアームの分解です。
まず、ウエイトを取り外します。
可動部分を取り外します。
純正アームはテーパピンとボールベアリングの組合わせでアームが上下左右に動くようになっています。
このピンが曲者で、造りが非常に雑になっていて円錐形のところがざらざらしていました。
ベアリングに直接接触するところですからツルツルでも良いはずです。
ここは1000番から2000番のサンドペーパーでツルツルにしました。
その結果、アームの動きがより敏感になりました。
ボールベアリングを取り外したところ。
垂直支持の所には上側にゴムのスペーサーが入っていました。
これは取り外すかどうか悩みましたが、そのまま使う事にしました。
アームの上下動を支持するところにもゴムのスペーサーが入っています。
これもそのまま使用します。
ウエイトを差し込むパイプ。
白いダボがウエイトの溝に勘合して前後に動くようになります。
ダボを押さえているピンを外して、その奥にあるネジを外すとパイプも外れます。
S字アームは2個の六角ネジで固定されています。
カートリッジシェル取り付け部分は1本のネジで固定されています。
その他のパーツを取り外します。
次はいよいよS字アーム本体の改造です。
まず、アーム内部に使用されている導線の交換です。
線を引っ張り出してみるとスポンジを編み込んだ様な複雑なねじり方をしています。
うーむ、もしかして独自のノウハウがあったらどうしよう、と思いましたが、ここで止めるわけにはいきません。
交換する内部導線はオーディオテクニカのアートリンクと言うピンケーブルを使用する事にしました。
これを切り落として内部の導線を使用します。
福岡にはなかなか納得できる物が無く、考えた末に市販のケーブルを利用する事にしました。
説明書きに導線の直径が書いてあって、この種類ならアームパイプに4本入りそうだと言う事で決めました。
この導線は方向性があるので方向を確認して作業する必要があります。
純正に比べるとかなり太くなっています。
もう少し細い方が良かったかも知れません。
導線を交換します。
チューブを被せるとパイプの内径ギリギリになってしまいました。
アームの中にエポキシ接着剤を流し込む予定なので接着剤が途中で止まるようにスポンジを巻きました。
パイプの先まで接着剤が行くとシェルを取り付ける部分まで固まってしまう恐れがあるし、先端が重くなり過ぎてバランスが取れなくなると思ったからです。
パイプの根元で、さらに細い導線に接続されています。
この導線はアームの動きに影響があるので、そのまま使用します。
給油器を使ってエポキシ接着剤を流し込みます。
給油器はビニール製の一般品で安価な物を使用しました。
どちらにせよ使い捨てですから安物で十分です。
長時間硬化型とは言え、混ぜた時から硬化が始まっているので手早く作業します。
アームの根元にも接着剤を流し込みます。
これで分解不可能になりました。
失敗したら捨てるしかありません。(笑)
接着剤が硬化したら(24時間以上)、熱収縮チューブを被せます。
これは肉厚があるタイプで熱を加えてもなかなか収縮せずシワが残ってしまいました。
これは、アーム本体の防振効果を狙ったものです。
さて、アンプへの接続ケーブルは同じくオーディオテクニカのアートリンクですが、こちらは太さの制限がないので1グレード上の物を使用しました。
太さが純正品の2倍くらいあります。
出来るだけ短く使うために70cmに切り落として使用しました。
このケーブルも方向性があるので間違って切り落とさないようにします。
GT2000Lのアームはケーブルが直付けで他メーカーの物と交換できません。
個人的には音質劣化の原因(コネクタ)が無い分好ましいと思っていますが、交換は面倒です。
アームを元通りに組み立てた後、アームからの導線と結線します。
完成!
チューブにシワがあるのが玉にきずですが、オリジナルに比べると倍くらい重くなりました。
また、剛性感は増したのにアームの動きがとてもスムーズになりました。
ピンを磨きなおしたのが効いているようです。
すぐ交換したいのは山々ですが、比較のためオリジナルの音を試聴します。
まずは馴らし運転にジョージ・デュークの「ライト・メッセージ」。
次に中島みゆきの「私の声が聞こえますか」からB面最後の「時代」。
これはミキシングがシンプルなので古いわりに高音質です。
そして、テラークデジタルの「小澤の四季」。
これもなかなか高音質ですね。
ひととおり試聴したところでアームの交換をします。
まず、オリジナルのアームを取り外します。
蝶ネジを緩めて上に引き抜きます。
オートアームリフターが付いているのでアームの隙間にメカが詰まっています。
ソレノイドや基盤等、複雑な構造になっています。
ベースの部分にも電子部品があります。
これ全てオートアームリフターの為だけの物です。
音質的には・・・あまり良くないでしょうね。
取り外したオートアームリフター付純正アーム。
ベースの比較。
可能な限りパテで隙間を埋めているのが分かります。
アームの比較。
手動リフターはそのまま残しています。
それ以外は可能な限り隙間を埋めています。
アームを取り付ける前に鬼目ナットをエポキシ接着剤で固めます。
この部分はパーティクルボードに鬼目ナットをねじ込んでいるだけで強度が弱いので、鬼目ナットの隙間に接着剤を流し込んで、がっちりと固定しました。
理想的には貫通させて裏側からボルトナットで締めた方が良いかも知れません。
取り付け完了、各部の調整をして試聴です。
音はまったくの別物。
付帯音が無くなって、とても見通しが良くなりました。
見通しが良くなった分、小さな音や細かい音まで良く聞こえます。
奥の方の埋没しそうな音もちゃんと届くようになりました。
低音から高音まで定位がしっかりして立ち上がりが良くなったのに刺々しさはなく艶やかです。
ともかく私の好みの方向に変わったので一安心。
この程度の改造でここまで良くなるとは。GT2000はアームが弱点と言うのが良く分かりました。